ドクン、ドクンと胸が嫌な音を奏で始める。

まさか……


「ねぇ、凛……美術の時、いつもここの席に座ってた人、知ってる……よね?」


ごくりと唾を飲み込んで、カラカラに渇いた口から震える声を絞り出す。

すると、凛は呆れたようにハハッと笑った。



「もー何言ってんの、瑛菜!

そこにはいつも誰も座ってないじゃん」




──呼吸が止まりそうになった。

凛の声も、時計の針が動く音も、何も聞こえなくなる。


「う、そ……」


そらは、最初からいなかった──?