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僕が目を覚ますと隣に君の姿は無く、代わりに1枚のメモが残されていた。


【ありがとう。さよなら。】

たったそれだけ。


でも、君と僕はもう会えないということだけ理解できた。


だって、君を見たのはあの日が初めてなんかじゃない。


辛そうな顔であの男の家に入る君を、何度も見た。


ずっと、ずっと。

君を助けたかった。


結局、助けられなかったけれど。



君のことなんてなにも知らないけれど、こんなに誰かを愛おしく思ったのなんて初めてだった。


たった1日。

それだけでも君と過ごした時間は一生のうちで、1番幸せな時間だった。



瞳から溢れそうになる熱をこらえて窓を開けると朝日に暖められた空気が僕の頬を撫でる。




またいつか、君に逢いたい。

そんな気持ちで空を見上げた。