「なんか、本当に恋人同士みたい」

「そう?」

「うん、ありがと」

「どういたしまして」

その後の藤井さんは終始ご機嫌で、ずっと笑っていた。
それが嬉しくて二人の会話も弾む。

まるで。


本当の恋人同士の様に。


公園まで向かう帰り際。
やっぱり藤井さんは公園まで行かず、その手前で立ち止まる。

その事はなんとなく想像できていた。


「帰る?」

「え、あ、うん」

先に聞かれると思ってなかったのか、藤井さんは挙動不審で頷く。



「明日は」

「うん」

「明日は昼にはいてね」

「なんか、するの?」

「秘密」

「何それ」

「いいじゃん、だから明日また」

「わかんないけど、わかった」

「はは、そっちが何それだし」

藤井さんはクスクス笑った後、前へと一歩踏み出す。
そして踵を返すと、


「また、明日ね」


そうやって笑って走って行った。


これもお決まりのことだから。
俺は自然と、その後ろ姿を見つめて。

ふっと、微笑んだ。