好きな気持ちぐらいしか知らなかった俺は、お節介にも川田先輩を探しに行った。
卒業したらもう、云うことすら出来ないのだから。

だけど、先輩は彼女の肩に腕を回して、他の卒業生と騒いでいた。


ずっと、待ってる泉のことなんて気にもせず。


結局先輩に何も言えず、俺は静かに泉のいた場所へ戻った。

泉は、来ないことがわかったのか…。

泣いていた。
必死に我慢してるのは、見てわかる。



それを見て、守りたい。

素直に。
そう、思った。


それから平然を装って、泉のとこへ向かった。
あたかも、今来たかのように。

「うお、こんなとこでお前何してんの?」


大げさに驚いた振りをしながら、俺は泉の背中に話し掛ける。
背中にしたのは、泣き顔を見ないように、だ。

だけど、泉はすぐにくるっと振り返って。

「あっ、順二じゃんっ!順二こそ、何してんのよ」

そうやって、赤い目で笑ったんだ。