レンタル彼氏 Ⅰ【完結】

駅前までタクシーを捕まえて向かう。
到着してお金を支払って降りた。

辺りを見回すが、まだ伊織はいない。

少し早かったか。


改札に続く階段の下まで行くと、カバンからタバコを取り出して火を点けた。
それを吸い終わるぐらいの時に、伊織から着信がきた。


「はいはい」


「着いた、どこ?」


「階段下」


「………あ、いた」


一週間ぶりの伊織は、相変わらずだった。


それから私は食事に行こうと、居酒屋へと向かう。
チェーン店の居酒屋に入ると、案内された店員に「生中」と頼んだ。


「伊織は?」

メニューとにらめっこしている伊織に声をかける。

はっとして伊織は顔を上げると

「………ウーロン茶」

そう言った。


「ええ?!飲まないの!?」

まさかのソフトドリンクに吃驚しながら言うと、伊織は曖昧に笑った。

「…よろしいでしょうか?」

困った店員が、そう言うのを伊織がはい、と答えた。


店員がいなくなってから私は尋ねる。

「まさか、飲んだことないとか言わないでしょうね」

伊織は笑いながら首を振った。