軽く体を洗ってから、浴室から出る。
ベッドから移動した彼はソファーに体を預けていた。


後ろから彼を抱きしめて

「よかったよ、ありがとう」

そう、声をかけた。

曖昧な返事をする彼に笑いかけると、私はカバンからお金を渡す。


まじまじとそのお札を見る彼。

それを見て、やはりと思う。
やっぱり売りなんてやったことないんだな。


次に彼が出す言葉には、私も面食らった。



「…………あり、がとう」



…………ありがとう…?



お金を渡して、嬉しそうに白々しくありがとうと言われることはあったけど…。

こんなリアクション見たことない。


まだ、じっとたった二万を見つめる彼が可愛くて、私は腹を抱えて笑った。

ひとしきり笑った後、訝しげな顔をする彼を見て言う。


「あはは、ごめんね。
君、売り初めてでしょ」


「えっ」


ああ、やっぱり。

それから私はまた二万を彼に渡す。




合計四万が彼の手の中にある。