レンタル彼氏 Ⅰ【完結】

節々に。

その痕跡があったのに。

断片が見えてたのに。

例えば、同じ銘柄のタバコや。
耳元に光るピアス。
笑った後に目を細める癖。

何もかもに欠片が潜んでいたのに。


子供だった俺は気付かなかった。


ラーメンをご馳走になってから、店長の家に帰宅した。
先にシャワー浴びるな、と言いながら浴室へと店長は向かった。

俺は冷蔵庫から、勝手に缶ビールを取り出してそれを開ける。
その時に、ふっとペアのマグカップが目に入った。
…店長、彼女とかいるのだろうか。


そう、思いながら缶ビールを口にする。
冷たい液体が喉を通り抜けた。
携帯を見ると、由宇と麗奈からのメール。

後、もう一通。


美咲さんからだった。


「…え?」

その名前を見た時、思わず言葉が口から出ていた。

「…………」

美咲さんからメールなんて、連絡先を交換してからこのカタ来たことがない。

…何だろう。
そう、思いながら俺はメールを開いた。

【お疲れ様。
今度、家に来ない?
色々なとこに泊まってるんでしょう?
部屋、余ってるの。】

…どういうことだろう。


その真意がわからなくて。
見えなくて。
食い入るようにそのメールを見つめた。


偽の彼女にメールを返信することも忘れて。