部屋を出てタクシーに乗り込む。
もちろん見送りなんてものはない。

ここだけ万里さんらしい。


寮に戻って、俺は部屋に入ると力なくその場にしゃがみこんだ。


客、一人一人に思い入れなんてない。
そう思ってた。


万里さんは今まで俺を苛めることが快感でしかなくて。
美形の歪む顔は最高と、高笑いしていて。


こんなにも。
人を人として扱われないことがあるのかと思っていた。


俺は万里さんを憎んでたと思ってた。
嫌いなんだと。



今、動揺してるのは最後に見せた彼女があまりにも普通の女の人すぎて。