レンタル彼氏 Ⅰ【完結】

生まれてこの方、恋をしたことがない。
誰かを好きになんかなれなかった。


理由はわかってる。


だって。


俺は誰も信用してない。



「どうぞ」



助手席を開けて、りさをエスコートする。
りさは慣れたように車に乗り込んだ。



運転手付きリムジンだってりさにはなんてことない。
だけど、俺と外出する時は俺のこの国産車に乗るのがお決まりだった。


りさがそっちのがいいんだと。


「どこ行く~?」


「伊織は何がいい?」


「俺?俺ねえ~おかか」


「えっ?」


「あ、いや、おかかのおにぎり食べようとしてたとこにりさからメール来て食べそびれたから」


「ふふっ…」



りさは綺麗に笑う。
口を大きく開けて、がさつに笑うようなことは決してない。
今も手を添えて、目を細めて笑っている。


「りさ、定食屋行こ」


「あ、うん」


笑うのを止めて、りさが頷いた。