千尋くん、千尋くん







ど、どうしよう……。




このまま逸らしちゃうのも、なんか感じわるいし……。





頑張ってという意味を込めてウインクでもしようか。



いやいや、絶対にドン引きされる……。






「……千尋くん……」






結局、どうすればいいか分からなくて、ちっちゃい声でそう呟く。




困った時や寂しい時についつい千尋くんを呼んでしまう、悪い癖だ。





その時。





「……分かった」





一度大きなため息をついた千尋くんが、そう言って髪をくしゃくしゃにする。





「やった! ありがとう宇治橋くん!」





先生が笑顔で千尋くんの肩を叩いて、一之瀬くんの代わりにリレーのアンカーをつとめることが決定した。