千尋くん、千尋くん









……そんなわけない。





大好き、大好きだよ。




嫌いになんて、なろうとしてもなれなかった。





千尋くんのいない間、千尋くんのこと好きじゃないなんて。




一回も思わなかったよ。








「他にも、初めてできた彼氏だから浮かれてた。とか、正直冷めた。とか」





何かを思い出すように目をそらしながらそう言った千尋くん。




その言葉に、ハッとして慌てて否定しようとする。




……だけど、あんなにひどいことを言ってしまった手前。




今度は彼に、なんと言えばいいのかが全然分からない。








言葉につまるあたしに、千尋くんはズボンのポケットに手を入れて何かをごそごそと取り出している。