千尋くん、千尋くん











一瞬、目を疑った。




だけど幻でもなく、夢でもなく。



確かに彼はそこからあたしを見下ろしていたのだ。








伸びた艶のある黒髪。




少しだらしなく着こなされた、うちの高校の制服。





いたずらっ子のように細められている、あたしを見る瞳。






なんで……なんで……。





















「瑞穂……くん……?」

















まだ呆然としてるなかで、無意識にそう彼の名を呼ぶと。





にかりと白い歯を見せた彼は、楽しそうに「おー!」と返事をした。