千尋くん、千尋くん





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特に目的もなく、行くあてもなく、静かに雨音だけが響く校内を歩く。



こんなことしても、虚しいだけなのは自分がよく分かってるのに。




あたしはただただその歩を進めてしまう。




とりあえず自分の教室に戻って窓から景色でも眺めようかと、3階まで階段を上っていく。




不規則なリズムを刻みながらトントンと階段を上った、その不意の瞬間。



















「……あるみっ」

















後ろから誰かがそうあたしの名前を呼んだのだ。






振り返ったあたしは、そこにいた人物を見て思わずマヌケな声を漏らした。









「っえ……」