「……はい」
「鍜原」
「はい!」
ドクン、と心臓がはねあがって、一瞬だけ時間が止まる。
だけど、あたしのことなんてお構いなしに、すぐにまた次の名前が呼ばれていった。
ぼーっとしていた。
だけど、確かに聞こえた。
────今、宇治橋……って。
分かってる。
今呼ばれたのはひとつ下の学年の子だし、確かに"宇治橋"なんて、少し変わった名字だけれど、他にいくらだっている。
千尋くんじゃない。
千尋くんなわけないんだもん。
偶然、千尋くんと同じ名字の子がいただけ。
だけれど、反応してしまう。
悔しい……悔しい。
あたし、千尋くんのこと何ひとつ諦めきれてないんだもん。

