千尋くん、千尋くん








「な、んで……?」




「だから知らないって」




「ねぇ、なん……でっ」




「うるさい」




「なんでよ……ぅっ」




「……………」







久しぶりに泣いた。




誰なのかすら知らない、その彼の胸で。





今まで溜め込んだものが、涙になって目から流れていくみたいに。






家では我慢していた嗚咽も、弱音も、全部彼の胸にはきだした。






泣いてる間もずっとあたしを支えてくれたその腕は、初めてあたしが頼った証だった。