「……兄ちゃん」 「兄貴、家で待ってから。寄り道しないで帰れよ」 「………」 「行くよあるみ」 「は、はい……」 瑞穂くんにそう言い聞かせて、千尋くんはあたしを引っ張ったまま歩き始めた。 あたしを引っ張る千尋くんの左手が少しひんやりしていたことに、申し訳ない気持ちが込み上げる。 夏とはいえ、まだ少し冷えるこの夜に、どのくらいあのベンチで待っていてくれたんだろう。 あぁ、あたし……本当バカだ。