千尋くん、千尋くん








別に悪いことをしたわけでもないのに、どうすればいいか分からなくなってポツリと彼の名前を呟いた。




年季が入り、少し古びたベンチからギシリと音をたてて立ち上がる千尋くん。






怒ってる様子も何の感情も読み取れない、いつもの無表情。




だけど、なんとなくその場の空気が冷たい気がして……。







「あるみ、携帯見た?」




「え……?」





静かに発せられた千尋くんの言葉に、慌てて鞄の中から携帯を取り出す。





ママからの着信が2件。




その後に、千尋くんからの着信が2件。






そういえば、瑞穂くんと遊んでる間はずっとマナーモードのままだったから……全く携帯を見ていなかったことに気がついた。