千尋くん、千尋くん







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「はぁ……もういっかな」




瑞穂くんのつぶやきに、あたしは真後ろでコクコクと頷く。





場所は、さっきまでいたアミューズメント施設から少し離れた暗い路地だった。






ようやく背中から降ろされて、両手をふさいでいた瑞穂くんの鞄を彼に返す。




空いた片手で、先ほど口に突っ込まれたキャンディを口から離した。






「っぷは……び、びっくりした……」




「ふぅ……重かった」




「なっ……ひどい!?」




「ぷっ、うそうそ。案外軽かったよ!」




「……全然嬉しくない」





少し荒かった呼吸を落ち着かせた瑞穂くんは、楽しそうにクスリと笑った。