「だから、そんなこと考えてたらさ。たった1人の人を好きでいるとか、なんかバカバカしく思えてきちゃったんだよな」
「ち、中学生なのに……すごく深いこと考えてるんだ、ね」
「そうでもないよ。簡潔に言うと、ただ恋とかドキドキするとか、何なんだろうなって。ただの青くさいガキのちっちゃな疑問だし」
自嘲気味に鼻で笑った瑞穂くんは、そのまま視線を下へ落としていく。
なにか、言ってあげなきゃいけない。
バカバカしい、だなんて思っていてほしくない。
だけど、あたしが何かを語ったところでそれが事実だと言えるのだろうか。
瑞穂くんがあたしに求めているのは、本当にそんな御託の並べた答えなのだろうか。
悩む。悩んで悩んで、誰もが納得する答えを探してみる。
だけど、やっぱり……あたしの中での答えは拍子抜けするくらい安易なものなのだと思う。

