千尋くん、千尋くん







「ど、どうしてまた……?」




「あー、一旦帰ろうと思ったんだけどさ」





ぽりぽりと人差し指でほっぺをかきながら、苦笑いする彼。





「やっぱ、1人で本並べるの大変かなぁって思って、様子見に来たんだけど……戻ってきて良かった」




「そ、そうなんですか……」




「扉開けた瞬間、もう落ちる間際だったからさ。慌てて全速力で走ってスライディングしちゃったよ! あはははっ」






だからあたしが尻餅ついたの、背中だったんだ……。





「足にだけは自身あるんだよね。運動するの大好きだし! でも、もうちょっと速かったらちゃんとオレの胸で抱き止められたのになぁ……あっ、セクハラで訴えないでね!?」




「ぷっ……」




「え、今の笑うとこ?」





天然っていうか、無邪気っていうか。




わざわざ戻ってきてまで助けてくれた人のこと、セクハラで訴えるなんてしないのに。