千尋くん、千尋くん








あたしなりに、精一杯おっきな声を出したつもりだったが、周りの歓声が大きすぎて紛れていってしまった。




でも叫んだ直後、ゴールに向かって走ってくる千尋くんがあたしを見た。




一瞬だったけど、千尋くんと目が合ったのだ。






……気づいて、くれた?





そして、ラストスパート。





ゴールまで100メートルで、千尋くんの脚がさらに速く土を踏んでいく。






キャーッ!!!!

うぉぉおッ!!!!






興奮した生徒達がみんなそんな声をあげたのは、千尋くんが1位の走者に並んだからだ。