「なんで。
長いのを気にしてるなら切ればいいじゃないか」


「そうじゃねえ、この色が!
この緋い髪が恐くねえのかって聞いてんだ!」


格子に掴みかかった。


噛みつくような彼の目は今まで希薄だったマイナス感情が溢れかえって来る。



「…あ、ああ、うん、え、怖がる対象なのか」


きょとんと幼げな表情をする青年が、本当に実在しているのか解らなくなってきた。


よもや自分を慰めるための幻覚か。



男は格子の中から手を伸ばし、緋次の頭を鷲掴みにして髪をいじり始めた。



「綺麗な赤じゃないか。
最近日本や中国の漆塗りがこっちでも流行っているが、うん、あれによく似てつややかな色だ」


「………」





緋次は男の手を振り払う。


人から頭を触られた経験がなくて、見上げる人の存在感が恐くなった。