「お前に興味がある。
昨日の居合いは見事だった。
よほど慣れているのだろう、切り口が鮮やかで身のこなしも速く、返り血を一切浴びない君の動きは我が西の国でもそうできる奴はいない。
日本刀は速く舞う剣と聞くがお前ほどの瞬神を見るとついつい話してみたくてな。
しかし、聞くところによるとお前、明日に死罪となるらしいじゃないか、勿体ない」
「…勿体ない?」
緋次は驚いて振り返った。
それを何と思ったか、黒い男は頭をガシガシとかいて言った。
「ああ、すまない、調子に乗ると喋り過ぎる癖があってね。
直ったと思ったのにな…」
緋次はそんな男の謝罪を全く耳に留めず、ただ男の姿に驚愕している。
外人…黒い洋服を着た、黒髪、そして血のように紅い瞳の男。
しかも背後を想像していた屈強な面持ちではなく、冷ややかで儚げな青年であった。
緋次よりも確実に若い。


