緋次は名に刻まれた通りの緋い髪をかきあげた。
海風に舞うその色が青い景色によく映える。
「お前がこれを褒めたから」
「あ?」
「それに気を良くしただけだ」
吐き捨てるように言った。
これから上司と呼び頭を下げる相手には不躾な筈が、こいつはそういうのを機にしない奴らしい。
だから特に、感謝も感じなかった。
「単純な男」
あざ笑うジンは実に楽しそうに。
「単純でけっこうですよ」
「けっこうですか、まあいいがね。
これから忙しくなるぞ」
「そうなのか」
「まずは向こうの言語を覚えなきゃね」
「ぐ…」
緋次はジンの傍らで佇む女性に目を移した。
レインという名の彼女は日本語が喋れないのでまだ直接は話したことがない。
西洋では女性も剣を持つのかと感心した。


