それから、足が痛いと言っているにも関わらず暗い街中を疾走させられた。 宿屋で一泊した後、すぐに国を出るなどと言われ、秘密裏に開港している近場の湊から船に乗る。 「気が変わった理由を教えてほしいな」 甲板で水面を見下ろしながらジンが言った。 彼の名は『ジン』。 短くて覚えやすい名前で安心した。 「別に明確な理由じゃない」 緋次は血まみれになった羽織りを捨て、紅葉色の着流しの上に黒の上品な上着を着ている。 あまりにも上質なモノなので着るのに本気で覚悟がほしかった。