本当は、待ってたんだ。
カバンがあったから。

どうせお迎えに行くだろうなと思ったから、それを口実に一緒に帰ろうなんて目論んでいた。

気になっていたんだ。“あの日”から。
恩をきせるつもりはないけど、オレの事わかってるんだと思い込んでた。
屋上で一緒に弁当を食べたときも。


「だせーー、」


オレばかり思ってたのがさっき判明・・・
委員まで同じがいいな、なんて先走りもいいとこ。


ダサすぎる。
『まぁいいや、』なんて平気なフリしたけど、動揺しまくりだった。





明日から、ずっと隣どうしだ。
嬉しい誤算だった。同じクラスってだけでも舞いあがってたのに。

焦る必要はないといえば無い。

けど、

やっぱり今日中に話を通したいのが本音。
だから、『バイバイ』って言っちゃったけど、校門から引き返してきたんだ。



「どこ行った・・・?」


荷物を抱えた手が少し震えていた。顔が赤かったような気もする。

もしかして――・・・






「和真が“チャン付け”で呼ぶなんて似合わねーんだけど・・・」


「うっせ。」

まだそこかよ。
オマエには言われたくネーし。


「ラブなわけ?」

「マジで??」と隣の女子の眼がバッと開いた。


「わりーかよ!」

オレは思い当たったその場所を目指して踵を返した。