「わたしがこれ以上さくらさんと一緒にいれば、逆にさくらさんを不幸にしてしまいます」
「――何を仰っているのですか」
「わたしは、あなたに助けられたこの桜です」
旦那さまは、ほっそりとした、私のいつも見てきた指を桜の太い幹に這わせました。その瞬間に、風が旦那さまの髪にのった花びらをさらい、ゆっくりと地面に落としていきます。その様子を、ただじっと見つめていました。
「ひとりになってしまったさくらさんが、元気になるまでと決めていたのですが、はやり来るべきではなかったみたいです」
「……旦那さまは、もう私と一緒にはいられないということなのですか?」
「わたしがいれば、さくらさんが結婚することも、子供を生すこともできません」
「私はそれでも構いません。結婚なら、旦那さまが初めてお会いになったとき、婿にと仰ってくださったではありませんか」
「あれも、間違いでした」



