とりあえず殴ろうと拳を握ると結城さんに止められた。 『…なんですか。』 「今はそれどころじゃないだろ。」 状況を思い出して唇を噛む。確かにそれどころじゃない。 魔界に人間が行くと言うことは死を意味する。無事だとしても体が五体満足では帰って来られない。 たとえ陰陽師であっても、だ。 「…奈子は知ってるの?」 『……っ。』 言えない。言える訳がない。 みんなからの視線を感じながらあたしはうつむいて心の中で謝った。