「仕事遅れたらメンバーに迷惑かかるからもう行く」
俺は逃げるようにして、部屋を出た。
「白石さんと想さんは結婚する仲だって忘れちゃだめ!」
その言葉がそこらじゅうに響いた。
麗子はなにかを悟っているような気がした。
古い校舎を抜け、琉愛がいる正門に向かう。
俺は車が見えたところでハッとした。
車のまわりに男たちが群がっている。
このまま車に戻ってしまったら琉愛は大騒ぎ。
イメージダウンもするだろう。
二股だって。
♪...♪...
「もしもし?」
〈なに?〉
「今から桜根学園高校に来て欲しい。それなりにファンがいる」
〈ムリ〉
「琉愛のためだ.....」
〈......わかった〉
俺の作戦。
それは想をここに連れてきて琉愛と帰ってもらう作戦。
「じゃあ近くに車とめて歩いてこい」
〈キーは?〉
「持ってこい」
〈わかった。急ぐ〉
電話をきり、そのまま待つ。
桜根学園もそのままでキレイだ。
知らない人が多いだろうけど、俺らJETLAGはこの桜根学園で育った。
学園長、元気しててよかった。
この作戦のまえに会いに行ったんだ。
琉愛をよろしく頼んできた。
そしたらお前は「保護者かっ」って言われた。
言われてみればそうかもしれない。
俺は琉愛を特別な存在として見ている。
琉愛からすれば優しいお父さんなのかな?
もういい。
俺は保護者でもなんでもいい。
だから琉愛のそばに。
.......近くにいたい。
琉愛はズルい。
メンバー全員をこんな虜にしといて...
「ほんとズりぃ・・・」
そう呟いた。
「オレはあなたが羨ましいです.....」
「え......?」
振り向くとそこには生徒らしき男。
「鍬さんですよね。あなたは格好よくて、なんでもできて本当に羨ましい・・・。なんでも手に入って。オレなんて告白すら出来ない弱いやつなんです.....」
コイツ......
コイツ、滅茶苦茶イケメンだぞ?
でもな、俺にだって手に入らない物がある。
本当に好きになった女はそんな簡単には手にいれられない。
「キミ、イケてるから・・・」
「え?」
「よし、俺が応援するよ。名前は?」
「2年3組の桐乃翔馬です」
「わかった。また会いにくるよ」
「待ってます」
そういい、桐乃くんは去って行った。

