「わりぃ。深く考えすぎてた」
「おお。死ぬ予定立ててないから安心しろ」
「陽が元気になったら、またみんなで遊ぼうな」
「…いつかきっとな」
明るく話してはいたけど、
俺は知っている
―――…記憶は想い出に変わっていく
“いつかきっと”
それは、その日は永遠に来ない
“元気”
にもならない。
俺は、死を待つだけ。
自分の未来に望みも、光もないから…
「今を生きる。今しかないものはたくさんあるんだから」
「ベタだな。でも、前向きジャン」
今の俺ができること。
数え切れることの中で、ある一つのこと。
今を精一杯生きること
生まれることが望まれていなかった俺だけど、
あと少しの時間しかない
そう思うと、今を生きよう…と思えるようになった。
そして“一ノ瀬陽”として最後まであきらめない。
「今できることを考えただけ」
「そっか」
病気はやがて俺から
体力も気力も気持ちさえも奪ってゆくだろう。
だったら、
自分からすべてをなくしてしまえばいい
そして
差し出せばいい
やるよ、もっていけ、俺のすべてを

