《次の日,朝》
「あれ?母さん、ゆづは?」
朝起きてリビングに行ってみたら結弦がいない。
「あら、さっき行ったの結弦ちゃんだったの?
お母さんてっきり千鶴くんが先に行ったのかと思ってたわ」
「ゆづが先に?」
「そうよ〜。え〜っと15分くらい前に出ていったかな」
まじかよ。
結弦、昨日のおれの言葉相当引きずってるんだな。
―これはやばい。
「ちょ、ごめん母さん、おれも行くわ!」
「あら、じゃあ朝ごはんはいらないわね。いってらっしゃい」
おれはかばんを持って、家を飛び出す。
駅まで全速力で走ってちょうど来た電車に乗ると
見覚えのある後ろ姿。
おれはそいつに声をかけた。
「おい、永見」
「わっ、何だ、千鶴じゃん。ビックリしたぁー。」
永見は大袈裟に驚いたけど、今はそれどころではない。
「お前、結弦見なかった?」
永見は1度おれの周りを見渡して
ありゃ、そういえば…と呟いた。
「見てないけど…どうしたんだ?
和泉さんと喧嘩でもしたのか?」
「そっか。いや…何でもない…」
結弦…おれ…どうしたらいいんだ?
学校に来ても、おれは授業に集中できずに
休憩中に何度か結弦の教室に行ったが、その度に結弦はどこかに行っていた。
結弦のクラスのやつに聞いたが
学校にはちゃんと来ているらしい。
早退もしていない…。
―そのまま放課後になった。

