水無は先輩を目に入れると走り寄った。そして着くなり勢いよく頭を下げた。


「先輩!ごめんなさいっ!待ちました?」


「いや。今来たとこ。じゃあ行こっか。」


仄かに笑いながらそう言いながら肩に手をかける。


「はい!」


悠祐の陰謀に水無は気にするはずもなく笑顔で答える。そして2人は歩きその道を出した。それを見ていた神無はイライラが募っていた。


「水無のやつ〜」
「悠祐のやつ」


2つの声が揃った。2人は声のする方に気づき目を合わせる。するとサングラスと帽子を身に付けた姿がお互いの目に入った。


「恭祐先輩…」
「お前は双子の…」


その時水無のはしゃぐ声が聞こえが2人の耳に届き我に返った。水無と悠祐は仲良く建物の中へと入っていった。


「あ!水無!…ほら、恭祐先輩も行きますよ!」

「!!お、おい!俺は…!」


神無が恭祐の腕を引き歩き出す。恭祐はよもや自分まで巻き込まれるとは思っていなかったため、腕が引かれた瞬間反応しなかった腕以外の身体の部分はその場に残され後ろへのめった。その後は引かれるままに身体が動き神無の後ろを時折引きずられながら建物の中へ入っていく。


中へ入って少し行くと一面に水槽が広がった。神無は恭祐を掴んだ手を離さず相変わらずリードして歩いている。上を見上げるといろんな生き物が視界いっぱいに広がった。


「うわーっ。ペンギンが泳いでるー!可愛いー。あ!エイだ!凄ーい♪」

「おぃ、弟。離せ。」


神無は振り向くことなく上を見続けている。後ろには不機嫌な冷めた顔をして腕を引かれた恭祐が立っている。


「イヤです。離したら帰っちゃうじゃないですか。」


話しながらも変わらず水槽を眺めている。


「当たり前だ。俺はそんなに暇じゃあない。」


逃れようと必死に言葉を探し、身体を少しでも神無から離そうとする。


「あれ〜悠祐先輩見に来てたじゃないですか。」

一瞬考えスッと恭祐の方を向く。


「違う。たまたま通りかかっただけだ。」


その視線から目を逸らし水槽もないただのカーペットに目を落とす。


「じゃあ、なんでそんなカッコしてるんですか?」


恭祐を下からゆっくり見上げていく。


「う…これは…だな…日に焼けるからだ。」


再びちらと神無の方を向いたがこじつけの理由しか浮かばず左に視線が泳ぐ。