悠祐は水無に見えないところで歪んだ笑顔を浮かべた。水無は水無で気づかず1人ワクワクしている。そして神無が戻ってくる時間を見計らって早めに水無を教室に戻し、悠祐も颯爽と自分の教室へ戻っていった。


日曜まであと4日。水無は内心ではワクワクしていたが表に出すとバレると考えいつも通りを心がけた。悠祐は嬉しさを隠さず殆ど始終笑顔だった。その顔に恭祐も疑問を抱いていた。また少しの異変に気づいた神無も注意を深めることにした。



そして日曜日。


「神無〜ちょっと出てくるね♪」


水無はいかにも楽しみだと言わんばかりの笑顔で靴を履きに行く。


「どこ行くの?」


神無が問いかけると靴ひもを結びながら変わらないトーンで水無は返す。


「買い物。」


「僕も行くよ。」


怪しいと気づいている神無は準備をしようと動き始める。すると靴ひもを結び終わった水無は立ち上がり部屋のドアに手を掛け振り向いた。


「大丈夫♪ついでに色々寄るから時間かかるし。今度神無も一緒に行こう♪」


完璧に怪しい言動に神無はふと考えた。そしてすぐに笑顔に切り替えた。


「うん、分かった。寮で寝てるね♪」


「うん。じゃあ行って来ます。」


お互い手を振り合い笑顔で目を合わせる。


「行ってらっしゃい。」


パタリと部屋のドアを閉じ、水無はさも嬉しげに飛び跳ね、鼻歌を口ずさみながら駆け出した。神無はドアが閉じたその瞬間笑顔を止めひらひらさせていた手を無造作に投げやり大きく溜め息をつく。


「怪しい…水無が僕を置いてくなんて。“今度”なんていっつも言わないのに…あ!もしかしたら悠祐先輩の仕業?!…だったらヤバい…あの人水無のこと狙ってたし…はぁ〜…最近手を出してこないと思って油断してたな〜。しかも水無も気付いた素振りなかったし…あ、まさか…!」


1人であたふたしながら服を着替え荷物をまとめ、サングラスをかけ深く帽子を被り水無の後を追った。