恭祐は今日悠祐の新たな一面を見た。今まで一緒にいながらも初めての悠祐に嬉しさと幸せを仄かに感じていた。一方の悠祐も今までにない恭祐の優しさに心が温まっていた。お互いがお互いを大事に思い繋がっている安心感を得られている。
今日俺達はまたさらに絆を深める日を過ごした。双子でありながらお互い特別な関係。これはこれでありか─────



「ねぇ恭ちゃん。あの時さ、『なぁ。悠祐。…俺って…』って言ってたじゃん。あれの続き、何?」


「俺はそんなことを言ったか?」


「言ったから聞くんじゃん。何、何?」


「さぁ、なんだろう。そんなことを言った覚えがないな。」


「えー。絶対覚えてるでしょ〜。教えて!ねー恭ちゃ〜ん。」


「知らない。やっぱり聞き間違いだろう?」


「絶対聞いたよ〜。ねぇ恭ちゃ〜ん。」


恭祐のからかうような声と悠祐の甘えた声が廊下に響く。恭祐はクスッと微笑んで足を進める。その前を悠祐は恭祐を覗き込むように、後退しながら同じ方へ向かう。



あの時恭祐が言いかけた言葉。今思えばそれは、言ってしまえば悠祐があれ以上のことをしかねないほど、悠祐にとっては堪えるものだっただろうと恭祐は感じていた。


『なぁ。悠祐。…俺って…お前のこと好きなのだろうか?…それを考える俺は、おかしいだろうか?……悠祐。…今考えたのだが俺はきっとお前のことが好きだ。…あの時からずっと。好きだ。悠祐。』


言わなくて正解だっただろう。滅多に自分の感情を口で表に出さない恭祐にとって、好きだと伝える事はハンマーで頭に衝撃を与えるほどの威力があっただろう。今ではあの時口を紡いで良かったと思うようになった。