見られた俺達はというと─────


「っ…はぁ…はぁ…」


恭祐は少し離れたトイレまで走ってやっとの思いで着いた。壁に手を付きもう片方の手では逃げ出して来たままの乱れた服を胸元で押さえていた。


「…くそっ。っ……ゆ…すけのやつ…あの場面で…楽しんでいやがった…ふっ…流される俺も情けない、か…。」


少しずつ落ち着いてくる呼吸に合わせ口数が増える。そして呼吸が整った頃段々近づく足音を耳にした。恭祐はそれに気づくと個室へ籠もった。カチャッと音がした直後にはその近づく足音はこのトイレの中へとやってきた。


「ちょっ!恭ちゃんっなんでっ。…恭ちゃん…大丈夫…?」


悠祐の心配をいかにもしているぞという声を聞いた恭祐はその言葉に苛立ちを覚えた。


「大丈夫なわけあるか。」


冷徹な声がトイレに響く。その一言で恭祐が怒りを露わにしているのだと悟った。


「恭ちゃん、ここ…開けて?」


お願い!と言わんばかりの声でドアに手を付き反対側へいる相手に意識を飛ばす。


「いやだ。」


だが恭祐は端的に一言返した。中にいる恭祐はそのドアに背中をもたれかけ腕を組み鋭い眼差しで目の前のタイルの壁を睨んでいた。


「あの子達には口止めしたから!お願い!」


だが恭祐の強い眼差しは変わることなく目の前の壁を睨み続けていた。そのことも大事だが今はそれ以上に悠祐の態度が気に食わない。なんとか自分を納得させようとしている、さらには自分だけ楽しんでこの場を納めようとしているようにしか思えなかった。


「恭ちゃん…何がダメなの?口止めはちゃんとしたよ?嘘じゃないよ。絶対言わないようにしたから。ねっ?恭ちゃん…ここ、開けて?」


やはり気付いていないのだと悟った。睨んでいた強い目は一気に細くなる。


「もうそのことは分かった。」


呆れたような口調だ。その言葉から疑問が返る。


「じゃなんで?…俺が悪い?」


恭祐の視線は左へとズレる。そして沈黙として返す。その沈黙を受け取り考えた。自分のどこが悪かったのか。勿論自分なのだから分かるはずがない。それでも恭祐の為を思い考える。


「ごめん恭ちゃん…俺…分かんないや。自分のことだもん。どこがいけなかったか教えて?」