俺は家を飛び出した。

どれだけ合鍵を握り締めてソファーに座っていたのか分らないが、起きた時に登っていた太陽はもう空には無かった。

代わりに満月が夜道を照らしている。

「エレナ……エレナっ!!」

走りながら名を叫ぶ。

「エレナ……エレっのわッ!?」

勢い良く転んでしまった。

何もない平らな所でつまづき冷たいアスファルトに倒れる。

ズズズッと皮膚が擦れた。

右側の肘と膝がズキズキと痛む。

痛みに顔を歪めながら立ち上がり再び歩き出す。

すねに、つーっと血が垂れるのが分かった。

「何処に居るっ!?……エレナっ」

怪我なんて気にせず、走り続ける。

「返事っしてくれッ」

角を曲がり、青信号が点滅して赤に変わるのが見えた。