一般人になるまで

「佳奈？」

聞き覚えのない声が後ろから聞こえ、呼ばれた佳奈は、振り返った
拓人と由紀も覗き見るように、目線をそちらに向ける

佳奈は、相手を認識すると、今日一番であろう笑顔を向けて走りよった

「わぁ、あっくんじゃん！ここで働いてたの！？」

拓人が、名札の位置を見ると、『医院長』と書いてある
佳奈、医院長となんの繋がりがあるんだろうと、ひっそりと由紀に耳打ちする

由紀もびっくりしたようで、キョトンとしながら、親…ではなさそうね…と返事をする


二人がコソコソ話しているのを横目に、佳奈はあっくんと呼ばれる人と楽しそうにお喋りしている

「俺も医院長とお近づきになりてー…」

「どうせ不謹慎な理由でしょう」

しかし、佳奈があまりにも楽しそうに話しているので、仲を割って入るのもどうかと思われる
拓人が時計を見ると、すでに7時を回っていた


「佳奈、俺そろそろ門限だから、じゃ！」

と一言耳打ちし、出口へ向かって一直線する拓人を、私も追いかける
出口についてから、佳奈に手を振って、ばいばい、と合図する