…罪滅ぼし?
この女…何の話をしている
甲斐のファンだろ?
だからさあやのアパートで何かしていたんだろ?
二人の仲を裂こうとして…

目の前で逆ギレをしている女のことに気を取られ、大声で揉めているのも忘れていた

すっかり日は暮れていたので、薔薇を楽しむ見学者はもう見当たらない

お陰でこの騒ぎを見物する客もいなかった

しかし、遥達の騒動を聞き近寄る人物はいた

扉を背にしている遥は、温室の中から近づくその人物に気づくのが遅れた

「どうしましたか?」

扉の向こうからは慎太郎の訝しげな声が聞こえ、すぐ後ろにいるのが分かる

…やべっ!見つかった…
どうする、自分?
振り返る?ダッシュで逃げ出す?

この後の行動を考えていると扉が中から開けられてしまった

「何かありましたか?
大きな声が聞こえましたが…」

温室に背を向けたまま息を潜めていると、遥と女の間に分け入った

小夜に見つかる覚悟を決め、顔を上げると温室から出てきたのは慎太郎一人だけだった

「この男が中へ入れてくれないの
どうかしてるのよ!」

「そうですか…
それは困りますね
やっと姿を現した人とゆっくりと話をしなければならないのに…」

…姿を現した人?
この女が来るのを待っていたのか?
いや…女と知り合いのような話し方だ…
いったい、何の話をしている…

二人の何か含んだ言い方に疑問を抱き、その顔を交互に見つめた