それから2ヶ月が過ぎ、新緑の芽吹く季節となった

「平野さ~ん、この機械おかしいんです~助けてくださ~い」

少し離れた場所から新入社員が小夜を呼ぶ声がする

…やれやれ…今度は何をやらかしたの?
昨日はドリップコーヒーの粉をインスタントと間違えて課長に飲ませてたよね
その前は…

そんな事を思いながらヘルプを求めた声の主の元に来た

「この機械…止まっちゃったんです~
叩いてみても動かないんです~」

子犬のように瞳を潤ませながら、愛くるしい表情で訴えてきた

「どれ…」

彼女と立ち位置を取り替えてプリンターの表示を覗いて見る

…あなた…日本語読めるよね…

「壊れてはいないみたいよ…
後ろにあるA4用紙をここにいれてみて?
叩くよりその方がいいみたい」

こんな調子でこの1週間は振り回されている

決して悪気は無いようだが、天然というか…無知というか…

指導係りに任命された小夜はこの日、何度目かの溜め息を吐いた