次の日の朝早く、慎太郎が借りたというこじんまりとしたアパルトマンで小夜は目覚めた

隣のベッドには由美子が"男気を見せろ!"と背中に書かれたTシャツを着てうつ伏せで寝ている

…わざとかな…?
いや…何種類か持ってたから…
由美子さんらしいチョイスだ…
東京のアパートでは…"女盛り!!"だったっけ
でも書家としてその言葉選びはアリなのかしら?

パーカーを羽織り、リビングでミネラルウォーターを口にしていると玄関から慎太郎が入ってきた

「おはようございます…
散歩にいってらしたんですか?」

由美子と二人で寝ていた部屋の向かいが、慎太郎の寝床だと昨夜説明を受けた

「いや…パンを買いに…
私も山岡さんも料理は苦手なので、美味しいパンとコーヒーがここでの朝食です
やはり焼きたてが最高です」

そう言われてみれば、その腕には大切そうに紙袋を抱えていた

…慎太郎さんもフットワークが軽い人なのね

「うわぁ~聞いただけでも美味しそうです
あたしコーヒーを淹れますね」

そうは言ってみたものの、初めてのキッチンでお湯を沸かすのでさえ戸惑ってしまう

蛇口から出た水を使うのかも分からなかった

「いいですよ~
私、料理は出来ませんがコーヒーを淹れるのは得意なので任せてください」

慣れた手つきで豆を挽きはじめた