少しばかり不幸な僕と少しばかり怖い魔界人


『来い。』

俺は、この女を建物の陰に連れていった。

『お前、なにしにここへっ……。』

やべぇ……キス……されるとは……。

隙をみせすぎたか……。

へなへなと力が抜けていくのがわかる。

立っていられなくなり、座り込んでしまった。

体が……言うことをきかない……。

こいつには特殊な力が備わっている。

"魅了"。

キスした相手の力を一時的に抑えることができる。

『……くそっ……。』

『苦しいでしょう?
 でも、その苦痛に歪んでいるキレイな顔も素敵よ、銀士。
 もう少しだけ待ってて。
 貴方の"仲間"とやらも連れてこられるわ。
 お兄様に、ね。』

『あいつ、らはっ……関係、ない。』

『なに甘えてるのよ。
 あの人間も始末しなきゃいけないのよ。
 "鍵"を手に入れるためにも、ね。』

『なにっも、殺すこと……はない、だろ。』

『王もおっしゃってたわ"殺さなくともよい。"ってね。
 でも、わたくしは貴方の泣き叫ぶ姿が見たいのよ。
 貴方が唯一見せてくれたことのない表情をね。』

こいつ、頭がイカれてる。

『おまえが……そんな、に……こわれっ、ているとはな……。』

『"壊れてる"?
 わたくしは完璧なのよ。
 少し大人しくしてなさい。』

『……ぅ、ぁあ!!!』

俺の意識はそこで途切れた……。