*side 銀士*
ーーーーーバサァ。
俺、どうしたんだ?
人間に協力するなんて……。
琉南が釣れなかったのがそんなに気に食わなかったのか……?
普通に笑ったのはいつぶりだろうか。
"銀士"
琉南が最後に呼んだ、俺の名前が耳から離れない。
普通に、ごく普通に名前を呼ばれただけだ……。
ふっ、動揺してんのか、俺。
まだまだ俺もガキだ。
可愛げのねぇ女に名前呼ばれただけで動揺するとはなぁ……。
俺は、琉南のことが……
ーーーーーバサァ!!
一瞬、よぎった想いをかき消すように翼を大きく羽ばたかせた。
人間界と魔界人が……なんてふざけた話だ。
王から"紫子が裏切った"と聞いたときは"愚かだ"とさえ思ったが……。
俺の方がよっぽど愚かだ。
魔界を裏切って……
人間の味方して……
ましてや人間の女に……
想いを寄せるようになるとは……な。
銀士は自嘲ぎみに『ははっ……』と笑った。