試合が終わって、フェンスの外へ出てきた宮田さんに飯島さんが駆け寄る。
「さよちゃん、お疲れさま。
あの、タオル使って。」
「なっちゃん!ありがとー。」
飯島さんから笑顔でタオルを受け取り、宮田さんは飯島さんの後ろに立つ僕を見つめてピースをする。
「負けちゃった!」
「知ってる。見てたよ。」
僕は元気そうな宮田さんに安心して、目の前まで近寄る。
「ベスト4でしょ?
すごすぎてびっくりした。」
「あは、テニスは得意って言ったでしょー。」
「まあね。でも予想外。」
「どういう意味かな?」
そこで宮田さんは思いついたように聞く。
「あ、ゆうちゃんは?」
「ああ、さっきメール来てて、一試合目は勝ったって。」
「おぉー、じゃあ2試合目見に行こ!」
「うん。でも2試合目は昼過ぎからだから、屋台見てまわんない?」
「いいね!じゃ、着替えてくる。」
更衣室のほうへ走っていく宮田さんを見送って、僕は飯島さんのほうを見る。
「飯島さんも来るよね?」
「あ、えっと、いいの?」
「悪いわけないじゃん。行こ。」
「うん。」
飯島さんはうれしそうに笑ってうつむき、僕の少しうしろを着いてきた。
今年の球技大会2日目がたまたま休日に重なっているのもあって、今日は保護者もたくさん来ているようだ。
たくさん並ぶ屋台には小さな子供たちやその親が集まっていて、かなりにぎわっている。
「ね、三宅くん。
わたあめ食べたい!」
「へ?じゃあ買ってきなよ。」
「えー。」
「いや、おごりません。」
制服姿になった宮田さんはその屋台にはしゃいでいるようで、ふくれ面になりながらも軽い足取りで甘い匂いのする屋台へと歩いていった。
僕はそれを見送って、首にかけたカメラを手にとって賑わいを写真におさめる。
「あの、泪くん。」
少し遠慮気味に声をかける飯島さんに、カメラを下ろして振り向く。
「ん、どしたの?」
「それ、何撮ってるの?」
「え?ああ、これね。」
僕は飯島さんの横に並び、デジカメのディスプレイを見せる。
十字のボタンを横に押して、次々と写真を見せていった。


