『そんな!陣内さんが殺されたのは深夜1時だって刑事さん言ったじゃないですか!』

『現在の法医学では、それぐらいの誤差はありますよ。気にしないで下さい』

大切な息子に嫌疑がかかるかもしれないのだ。気にするなと言われてもミサ子は納得出来なかった。

『奥さん、さっきも言ったでしょ?私が知りたいのは真実だけです。たまたま被害者の死亡推定時刻に尚人さんが現場に居た。分かっているのはこれだけです。たまたま通りかかったのかもしれないし、尚人さんが犯人かもしれない。でも私は推測で話はしたくないんです』

尚人が犯人かも…と言われたミサ子は体をビクッと震わせた。

あの夜、昔の男大牟田が死んだニュースを聞かされたミサ子は、感慨に浸りながら自室に戻った。

大牟田を懐かしみ中々眠れない。どれくらい時を刻んだろうか…突然隣の倉庫のドアが開く音がしたのである。

そっと覗き見すると、やはり尚人であった。

声をかけようとしたが、又冷たい態度を取られそうでミサ子は躊躇した。

今から思えば、あの時、声をかけておけば…

そこまで考えたミサ子は知らず知らず自分までもが尚人を疑っている事に気付き愕然とした。