『他の宿泊客との面識は?』

『無い筈です。事件の後は警察の方とかが沢山見えて、その時には亡くなった方のお連れさんや和歌山の大学から来て頂いた学生さん達と顔を合わせましたが』

『学生ですか、親の金でいい気なものですね』

鬼頭の言葉に尚人を重ねたミサ子はムッとした。

『尚人さんを廊下で見かけたのは何時ですか?』

『…病院から大牟田さんが亡くなったとの電話を受けて部屋に戻ってから、一時間後ぐらいです。眠れなくて本を読んでいたら隣の部屋のドアが開く音がしたので…こんな深夜に、どうしたのかと思い覗いたのです』

『大牟田教授が亡くなったのが深夜12時30分、その一時間後ですから尚人さんが廊下に居たのは1時30分頃…陣内多恵さんの死亡推定時刻と、ほぼ一致しますね』