自分では落ち着くようにと心に言い聞かせたが、結局未音の取った行動は部屋に戻る事であった。

後から考えれば、取り敢えず誰かの部屋に駆け込めば良かったのかもしれない。

ただ普段一人暮しをしている未音は先ず電話で救急車を呼ぼうと考えたのである。

少し冷静になれば多恵が死んでいる事ぐらい分かったかもしれないが、そこまでの平常心は持っていなかった。

部屋に駆け込んだ未音は震える手で机に置いた携帯を掴むと血で滑る指で苦心して119番を押した。

電波状態がかなり悪い。

アンテナのマークが消えない様に注意しながら呼び出し音を待ったが繋がる前に圏外になってしまう。

パニックになった未音は弓暢の携帯を呼び出した。

祈るような気持ちで画面を見る。