ミサ子の顔からあっという間に血の気が引き、はたから見た目にも真っ青になった。

『おや気分でも悪いんですか?…二つ隣の電話の音が聞こえたのに、うるさくて何も聞こえなかったと嘘をついてる…と言う事は奥さん、あなた何か聞いてるんですよ。そして隠してる。どうして吹雪がうるさかったなんて嘘を付くんです?何なら電話の音が聞こえる程度の騒音で廊下の様子が何も聞こえないかどうか実験してみます?』

鬼頭の言葉にミサ子は身震いした。

確かにあの晩ミサ子は聞いたのだ。聞いてはならない声を。

本来なら何も聞こえなかった、又は寝ていて気が付かなかった…と言えばよかったのかもしれないが、あの晩の出来事を脳裏から、記憶の一切から消し去りたくてミサ子は嘘をついた。
私は悪くない、何も聞いていない、例え何かあったとしても吹雪がうるさくて聞こえる筈がない…