(助けて…お願い…誰か…)

誰かに助けを求める等、今までの多恵にはなかった事である。

その願いが、この苦しみから解放して欲しいという意味ならば、それは叶えられたのかもしれなかった。

後頭部からいきなり髪をわし掴みにされ引っ張られた多恵は訳が分からずのけ反った。

そして、もう一本の鋭い刃が多恵のウナジに深々と突き立てられた。

延髄にある中枢神経を破壊された多恵は、その瞬間に絶命する。

涙と嘔吐で汚れた顔を恐怖で引き攣らせたまま顔面から床に崩れ落ちる。

ゴツッという額がぶつかる音を立てて肉塊になった多恵は動かなくなった。

腹部と頸部に二本の刃物を突き刺した異常な光景で、体を『くの字』に折り曲げたまま人生を終えた多恵はオブジェのように何時までも、そのままであった。