勿論多恵としても夫が背任行為で起訴されたのでは恰好がつかないから、たかが5億ぐらい貸してやるつもりだった。

だがそれは泰明がこの先一生を陣内家に預けるという意味である。

今頃は多恵を怒らせたと思い自室で頭を抱えているだろう泰明を思って多恵はニヤリとした。

出て来たついでに厨房に置いてあったワイン数本を持ち出し、弓暢の部屋に押しかけたのである。

『あなた年は?結婚してるの?』

『はぁ…もう30過ぎの中年ですよ。勿論結婚してます』

弓暢がどれほど迷惑そうな顔をしても多恵には関係ない。他人の気持ち等、自分には関係ないのだ。

誰だって自分の資産を知れば地面に平伏す。欲望に勝てる人間なんか居ない。

そして延々と多恵の自慢話が始まった。