『やだよ怖いもん。眼鏡で別に不自由してないしさ』

去年までは眼鏡をかけてゴーグルをしていたのに今年は度付きの偏光グラスに変えたようだ。

少年のような愛らしい顔に浮かぶ大きな瞳は雪光を受けてキラキラと光っていた。

『ねえ紗英?あの人って同じペンションに泊まっている人じゃない?…ほら、あのオレンジ色のウエアの目茶苦茶速い人』

再びサングラスをかけた未音が左方向を指差した。

『え?何処何処?…ああ、あの背の高い人でしょ?確かカップルが二組いて男が恰好良い方』

『そうそう!紗英もそう思った?何だか着てる服も趣味良いしさぁ、でも女の人が何か暗い感じの』

『思い出した!新婚みたいだったよ。でも絶対旦那の方が恰好良いよね。私達を放っといて、あんな女捕まえるんだから見る目ない』

『紗英、そんな事言わないの。どっか良い所あるのよ。スッゴクお金持ってるとか…』

『未音の方がひど〜い』